日本人の方と仕事をすると「自分はプレゼンテーションが苦手」という方によく出会います。
自分の考えを上手く伝えられない、観客の反応がイマイチといった悩みをもつ方が多い印象ですが、実はそれらの悩みを払拭するための近道があります。
それが「英語プレゼン」のスキルを学ぶことです。
いやいや、英語なんて話せないよ、という方ももちろんいらっしゃると思います。
たしかに海外に向けたプレゼンにおいては、英語が話せることが必須なのですが、今回ご紹介したいノウハウは、実は英語が話せない方ほど知っていただきたいノウハウなのです。
というのも僕の経験上、英語プレゼンで求められているのは明瞭性と簡潔性、そして観客を一体化させる巻き込み力だと感じていて、この3つの要素は海外はもちろん、日本の観客を惹き込むうえでも重要な要素だからです。
そこで今回は、日本語のプレゼン力向上にもつながる英語プレゼンのノウハウをご紹介します。
海外ではこういうプレゼンが求められているんだと知ることで、今後海外展開したい人の参考にもなると思います。
ぜひ、英語プレゼンのノウハウを取り入れていただき、あなたのプレゼンテーション力を磨き上げてください。
なお、今回の記事はアドビ社のPR企画「みんなの資料作成」に参加して執筆しています。
- 英語を使って海外顧客相手に仕事する日系企業サラリーマン
- もともと純ジャパ・海外経験なし、社畜生活で不眠症を経験
- 自分を変えるべく独学で&国内で英語を習得、TOEIC950点
- 現在はドイツ駐在中
- 英語で人生を豊かにする人を増やしたい!
日本のプレゼンと英語プレゼンの印象の違い
英語プレゼンの具体的なノウハウを解説する前に、まずは英語のプレゼンにはどのような特徴があって、日本のプレゼンとどう異なるのかを見ていきましょう。
英語のプレゼンってどんなの?
英語のプレゼンは、日本でよく見るプレゼンテーションとは大きく異なります。
例えば、初代iPhone発表の際のスティーブ・ジョブズのプレゼンが良い例です、ご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか?
思わず引き込まれる、魅力的なプレゼンですよね。
今となってはiPhoneがある生活が当たり前になっていますが、そんな今の状況で見ても思わず感動で震えてしまうようなプレゼンなので、当時の反響はもっと凄かったんだろうなぁと思います。
実際に観客から笑いや拍手が沸き起こり、反応がとても良いプレゼンと言えますよね。
では、日本でこのようなプレゼンを見たことがありますか?きっと多くの人が、日本でよく見かけるプレゼンとは違ったスタイルだなと感じたと思います。
英語のプレゼンに重要な3つの要素
では、このように観客の心を掴んで離さないプレゼンの秘訣は何でしょうか?
もちろんこの例はiPhoneという画期的な商品の紹介なので、商品そのものに観客の興味が強いこともありますが、それだけではなくスティーブ・ジョブズの重要なプレゼンスキルが隠れています。
その中でもここでは、特に重要な明瞭性、簡潔性、巻き込み力の3つの要素に着目してみましょう。
①明瞭性
使っているスライドがとにかくシンプルでメッセージが分かりやすいですよね。
例えば、アップル製品の歴史の紹介パートで使っているスライドは、紹介する製品の写真と、左上にその製品が発売された年の数字が書いてあるのみです。
またiPhoneの機能紹介パートでは、機能のキーワードと、それに対応するアプリのアイコンのみ。
シンプルでも、今ジョブズが何の話をしているのか、どのようなメッセージを伝えたいのかが明瞭で、見ている側としても理解しやすいですよね。
日本人のプレゼンで文字だらけのスライドをよく見かけますが、一言一句見てくれる観客はいないでしょう。
情報を詰め込みすぎると、観客は「結局このスライドで何を言いたいの?」と迷ってしまいます。
②簡潔性
説明に使っている英語表現は実は難しくなく、単語も文法も至ってシンプルな表現が使われています。
実際に、プレゼンの冒頭は次のような言葉で始められています。
“This is the day I’ve been looking forward to for two and a half years.”
(2年半、この日を待ち続けていました)
“Every once in a while, a revolutionary product comes along that changes everything.”
(数年に一度、すべてを変えてしまう画期的な新製品が現れます)
“And Apple has been very fortunate.”
(アップルは非常に幸運でした)
“It’s been able to introduce a few of these into the world.”
(そのいくつかを世に送り出すことができたのです)
どれも、中学~高校の英語をしっかり学習していれば理解できる文章だと分かりますよね。
あえて難しい表現を使う日本のプレゼンをよく見かけますが、観客が理解できないような表現であれば、観客はあなたのプレゼンについてきてくれません。
誰にでも分かるよう簡潔に説明した方が、観客からしてもメッセージを受け取りやすく、良い反応を得やすいのです。
③巻き込み力
このスティーブジョブズのプレゼンは、観客の心を掴んで話さず、常に観客を巻き込みながらプレゼンを進めています。
特に印象的なのは、iPod、電話、インターネットの3つの機能が1つになったことを説明していくパートです。
ここではiPodとPhoneとInternetのアイコンを順に、繰り返し紹介していますが、次第に観客席から笑いや拍手が起こってきます。
おそらく観客も、これら3つの機能が1つになった新商品、「3 in 1」に気づき始めたというサインでしょう。
そしてこの笑いや拍手が次第に大きくなってきたタイミングで「Are you getting it? (もうお分かりですね?)」と続けています。
このように観客の反応を見ながら、自身のプレゼンに観客を巻き込み、圧倒的な注目を集めているのです。
一方、観客の反応を見ずに、事前に準備した原稿を読み上げるだけの日本のプレゼンを見かけることがありますが、これでは観客を巻き込むことはできません。
あの感動的な英語プレゼンの裏にはこのように、スティーブ・ジョブズの巧みなプレゼンスキルが隠されていたのです。
英語プレゼンのノウハウを学び実践するメリット
日本向けとは大きく異なる英語プレゼンのノウハウを学んで実践すると、次のような3つのメリットがあります。
1.物事を伝える際に情報を整理して伝えられるようになる
2.コミュニケーションに自信がつくようになる
3.多様な価値観に触れられる
物事を伝える際に情報を整理して伝えられるようになる
1つ目のメリットは、「物事を伝える際に情報を整理して伝えられるようになる」です。
英語プレゼンでは、先ほど説明したように、明瞭性と簡潔性が重要ですが、明瞭かつ簡潔にするためには、プレゼンのスライドや説明で触れる情報や説明をできるだけ少なく、端的に表現する必要があります。
これを意識しながらプレゼンを準備する過程で、例えば
・自分のプレゼンの中で本当に重要な部分はどこなのか
・省略してもいい部分はどこなのか
といった、伝えたいメッセージの構成をしっかり理解できるので、情報を整理することができるのです。
情報が整理された状態で伝えられるようになると、観客の理解度が大きく上がります。
コミュニケーションに自信がつくようになる
2つ目のメリットは、「コミュニケーションに自信がつくようになる」です。
英語プレゼンには、観客の良い反応を得られ、観客とのコミュニケーションを楽しめるようになるためのノウハウが含まれています。
このノウハウはプレゼンの時だけでなく、様々なビジネスの場面、更には日常生活でも、すべてのコミュニケーションにおいても応用することが可能です。
コミュニケーションに自信がつくと、プレゼンスキルを向上するモチベーションに繋がり、更にコミュニケーションがよくなる、という好循環に入ることも可能です。
多様な価値観に触れられる
3つ目のメリットは、「多様な価値観に触れられる」です。
こればかりは、実際に英語でのプレゼン機会があってこその話になりますが、海外に向けて実際にプレゼンを行うことで、国ごとに反応が若干違うことに気づくと思います。
例えば僕が今働いているドイツでは、スティーブ・ジョブズのプレゼンのようなスタイルよりは、もう少し論理的な(ロジカルな)プレゼンが好まれる傾向があるなと感じていて、
・今日お話ししたい内容は3つあります、1つ目は〇〇、2つ目は◇◇、3つ目は△△です
・この商品は◎◎に優れます、なぜなら▽▽が従来品に比べ20%改良しているからです
といったように、話の構造(ストラクチャー)を意識した話し方の方が理解度が高いようです。
一方、先日イタリアの講演会で登壇した際に同じようにロジカルなプレゼンをしたところ、残念ながらあまり反応は良くなく、退屈そうにスマホを眺めている人が何人か見えました。
しかし、僕の後に続くプレゼンターがジョークを交えてプレゼンしていた時には会場はとても盛り上がっていたので、僕のドイツ人向けの堅いプレゼンはラテン系のノリのイタリア人にはウケなかったようです…
これ以外にも、それぞれの国や地域に特有の特徴や価値観があると思いますが、そういった「多様な価値観」に基づく反応を体感して経験値を得られるのも大きなメリットです。
英語プレゼンを習得するための4つのノウハウ
では「明瞭」で「簡潔」で「観客を巻き込む」プレゼンにするためには具体的にはどうすれば良いか、ここではその中でも特に重要なノウハウについてお話します。
なお、この章で紹介するノウハウについてもっと詳しく知りたい方は以下のリンクを参照してくださいね。
効率的なプレゼン資料の作り方についてもっと詳しく知りたい人はこちらへ
英語スライド作成で気を付けたい英語表記や、視覚・聴覚情報のインパクトを高める方法について、詳しく知りたいはこちら
ピラミッド・ストラクチャーを意識してメッセージをシンプルにする
明瞭なプレゼンにするためには、プレゼンの中で伝えるメッセージを極力シンプルにすることが効果的です。
ただしこのシンプルにするというのは一見簡単そうに見えますが、実は簡単どころかむしろ難しいです。
なぜなら、あなたが持っている情報の中から観客に触れてもらう情報を選ばないといけないので、選び方を間違えると、伝えたかったメッセージが伝わらない、大事な情報を伝えられていないということになるからです。
そうならないように意識しながら、メッセージをシンプルにするために重要になるのがピラミッド・ストラクチャーというものです。
これは、あなたのメッセージを伝えるための骨格(アウトライン)を考える作業と言い換えることができます。
まずあなたのプレゼンのConclusion(結論=主張)・Reason(理由=根拠)・Example(例)をそれぞれ、簡潔な言葉で考えてみてください。
そしてそれを、上から「主張-根拠-例」となるように積み重ねていき、因果関係を線で繋いで1つの図を作成します。
例えば、「Aさんにプロジェクトリーダーを任せるべきだ」という主張だと次のようになります。
このピラミッド・ストラクチャー構造をしっかり意識できていれば、情報を絞って厳選する時に何を省略して良いのかが分かりやすくなります。
極力シンプルにするために、例を省略して主張と根拠だけの説明に絞る、それでも観客が理解していないようであればその例を付け足す、といったように、状況に応じて融通が利くようになります。
表現を簡潔にする
プレゼンを作る場合は、スライドやスピーチの表現に特に気を配り、簡潔に表現するようにして、観客が理解しやすいようにしましょう。
たとえばスライドに解説などを入れる時は、文章全文を入れるのではなく、キーワードやフレーズのみで簡潔に表現します。
※海外の学会や展示会などで、説明文章が長々と書いてあるスライドを使って、ただそれを読み上げるスタイルの日本人のプレゼンを本当によく見かけます。英語で話す不安からか、話す原稿そのものをスライドに書いてしまうのだと思いますが、それでは観客にはメッセージが伝わりません!
英語、日本語に限らず、スライド作成時には、具体的に以下のような点に気を付けましょう。
・使う単語を揃える(品詞を揃える、レベル感を揃える)
・文章の形を揃える(長さやスペースを揃える、補足説明を揃える)
視覚情報のインパクトを意識して観客を巻き込む
観客を巻き込むためには、あなたのプレゼンに対して「このプレゼンは面白い!もっと見たい!」と思ってもらうことが大事です。
そのためには、あなたのプレゼンの内容(メッセージ)を、観客にしっかり伝えることが重要です。
メラビアンの法則によると、メッセージの信憑性に繋がる3つの要素とその影響力の比率は、次のようになります。
3つの要素 | 内容 | 影響力の割合 |
---|---|---|
言語情報(Verbal) | 言葉やメッセージからの情報 | 7% |
聴覚情報(Vocal) | イントネーションや発音などの「話し方」からの情報 | 38% |
視覚情報(Visual) | ビジュアル資料やボディランゲージからの情報 | 55% |
この法則によると、視覚情報の影響度が一番大きく(55%)最もインパクトが強いことが分かります。
プレゼンにおいても、視覚情報のインパクトを強めてあなたのメッセージをしっかり届けることで、観客の注目を集めることができます。
日本人プレゼンターで、プレゼン中にスライド(スクリーン)を見て話し、観客の方を全く見ないスタイルの方を本当によく見かけますが、それでは聴講者にはメッセージが伝わりません!プレゼンは観客との対話でスライドはあくまで脇役、プレゼンターであるあなたが主役だということを意識しましょう。
ではどうやって視覚情報のインパクトを高めるかというと、例えばアイコンタクトを使ったり、ボディランゲージを取り入れたりすることで、観客に対して効果的にメッセージを伝えることができます。
聴覚情報のインパクトを意識して観客を巻き込む
先ほど出てきたメラビアンの法則によると、聴覚情報の影響度は38%で、視覚情報の55%に次ぐ大きなインパクトを持つ情報だということが分かります。
視覚情報と聴覚情報の2つで、なんと影響度の9割以上を占めることになります。
つまりプレゼンにおいても、視覚情報に加えて聴覚情報のインパクトも高めることができれば、あなたのメッセージをしっかり届けることができ、観客を引き付けることが可能だということです。
聴覚情報のインパクトを高めるためには、次の4つのPが重要です。
①Pronunciation(発音)
発音は、観客が聞きやすいようにはっきりとクリアに話すよう心がけましょう。緊張してしまうこともあると思いますが、ボソボソと喋ってしまうとあなたのメッセージは観客に届きません!
②Pace(ペース)
プレゼンのペースの理想は、観客が情報を処理しやすい速度です。プレゼンの内容を知っているあなたに対し、聴講者は内容を知らないので、あなたからすると「少し遅いかな?」と思うくらいのペースで話すと良いでしょう。
③Pause(間)
スピーチに効果的に「間」を入れることで、流れを意味的・文法的に区切ることができ、観客にとって情報を整理したり理解しやすくなる効果があります。逆に間を入れずに喋ると、観客はあなたの話についていけなくなり、次第に意識が離れてしまいます。単調に喋り続ける先生の授業で眠くなった経験、皆さんもあるのではないでしょうか?プレゼンでも同じことが起こるのです。
④Punch(強調)
言葉やフレーズにおいて、強調やアクセントを入れることで、その部分を他よりも目立たせることができ、話す際の情報伝達やメッセージの重要性を強くすることができます。あなたのプレゼンの中でも特に強調したい部分を、より強く強調しましょう。
プレゼン資料の共有、展開はPDFが便利
プレゼンの本番が終わっても、気を抜いてはいけません。
プレゼンで観客を惹きつけられたとしても、アフターフォローをしっかりしなければ、観客の記憶に残りにくく、成果も上がらないからです。
そのため僕はプレゼン終了後、速やかにプレゼン資料を観客に共有するようにしていますが、パワーポイント資料そのものを共有すると容易に編集されて使われる恐れがあるので、PDFにして共有しています。
その際に便利なのが、PDFに関するさまざまな機能が無料(※回数制限あり)で使える「Adobe Acrobat オンラインツール」です。
たとえば、プレゼン資料のPDFをメール添付で送る場合は、Acrobat オンラインツールの「PDFを圧縮」機能でファイルサイズを下げ、先方のダウンロードの負荷を減らすようにしています。
英語プレゼンの資料では、簡潔に理解してもらうために多くの画像を使用しますが、Acrobat オンラインツールなら画質を高く保ったまま圧縮することも可能なので重宝しています。
またPDFにパスワードをかけてセキュリティを強化できる「PDFを保護」機能も、先方の安心感や信頼感を醸成するために欠かせない機能です、ぜひ積極的に利用してみてください。
まとめ:英語プレゼンからコミュニケーションのヒントを学ぼう
今回は、日本語のプレゼン力向上にもつながる英語プレゼンのノウハウについて解説しました。
明瞭性、簡潔性、そして巻き込み力の3つを意識して、あなたのプレゼンをより魅力的なものにしましょう。
このブログでは、英語で人生を豊かにするための有益な情報やノウハウを発信しています。
今まで縁や興味がなかったという人向けに、英語や海外に興味を持ってもらえるようなコンテンツを、また英語を勉強したくても時間がないという人向けに、効率的に英語を習得するノウハウ等を揃えています。
次の記事で、僕自身が英語を話せるようになって変わったことについて解説しているので、自分の生き方を変えたいと思っている方はぜひチェックしてくださいね!
コメント